「コラテラル」

2004年10月24日
←主演は、「俺ってカッコいいんだぞう〜」な映画を(セガール様とは違い)常にA級メインストリームで作り続け、そしてさまざまなジャンルに挑戦する野心を持ってるくせに、「MI-3」を作るあたりにパーペキな保険を感じさせる、ハリウッドスーパースターことトム・クルーズさん(42歳)。来日するたびに思うのですが、彼のファンに対するサービスぶりにはマジ頭が下がります。でも実生活では、ニコールとの電撃離婚、そして彼女が流産した子供のDNA鑑定をさせたりと(たぶん弁護士の指示でしょう)、ここ数年あまりいい印象がナイのですが――あの完璧に白く並びの良い歯を見せながらニカっと笑われると、つい騙されちゃうんですよねぇ。まあ俳優なんて騙してナンボかもしれませんが。

てっきりお正月映画にされるかと思ってた、トムトム主演「コラテラル」を観に行ってきました。

「コラテラル」Collateral(2004・米)
IMDb→http://us.imdb.com/title/tt0369339/
日本公式サイト→http://www.collateral.jp/
監督:マイケル・マン
脚本:スチュアート・ビーティ
出演:トム・クルーズ、ジェイミー・フォックス、ジェイダ・ピンケット・スミス、マーク・ラファロ、他

ストーリー:
アメリカL.A。夢はリムジン送迎業でありながら、12年間もタクシー乗務員をしている平凡な男マックス(J・フォックス)は、ある夜ひとりの男性客を乗せる。その客はヴィンセント(T・クルーズ)と名乗り、5箇所を回って欲しいとマックスに依頼。ごく普通のビジネスマンと思われたヴィンセントだったが、最初の目的地で冷徹な殺し屋だと判明、マックスは彼に脅されながら、夜のL.A.をタクシーで走り抜けるが――。

いや〜…いい意味でマイケル・マンらしい映画でしたねぇ。

「タクシーを借り切って殺人行脚」なんて、よ〜く考えれば破綻してる設定なんですよ。そんなバレるリスクが高いことをわざわざしなくたって、トムトム演じるヴィンセントは自分で車飛ばしてまわりゃいいわけだし。もし最初の場所でバレなくたって、連続殺人になるから確実にニュースになるし、ずっと一緒に乗ってりゃ顔だって充分覚えられるだろうし、指紋だってバッチリでしょう。とても殺人エキスパートがやることとは思えない。

なぜヴィンセントはそんなことしたのか。
それは――L.A.という街のせい?

一匹狼で、人間ってのはちっぽけなもんなんだと、ことあるごとにうんちくをたれる孤独な殺し屋が、好きになれない、慣れてもいない土地に降り立ったとき――たとえリスクを負ったとしても、誰かと一緒にいたかったのか。そんな風に思わせるなにかが…L.A.にはあるのか。

フツーだったら「設定が破綻してるよ〜」と指摘して終わっちゃう作品でも、マイケル・マンの手にかかると、L.A.という街にジャズといった音楽が絡み――雰囲気上々の中、冷徹な殺し屋トムトムはどこか哀愁を帯び、悪いやつなのに憎めない、どんな過去を持ってるのかと気になってしまう魅力ある男としてスクリーンに浮かび上がってくる。↑のように勝手に背景を考えてしまうほど。初の悪役だということより、私はそっちのほうに感心しましたね。もともと上手い俳優だってことは、よくわかってるし。オーバーアクト気味なのはともかく。

…と云うようにトムトムが熱演してた本作ですが、私が目を見張ったのは実は彼ではなく、マックスを演じたジェイミー・フォックスのほうでした。

最大公約数的で平凡な、夢を持ってるけど本気でかなえようとしてない男マックス。ヴィンセントとは正反対、心根が優しい彼をジェイミーは上手く演じてたな〜と。女はこういう男にキュンとしちゃうんですよ。実際のこの人も、マックスみたいないい人なんじゃないか、演技ではなく彼の地なんじゃないかと思ったくらい。そう思わせる説得力と魅力に、彼は溢れていましたね。ちょっとオーバーアクト気味なトムトムとは好対照で――う〜むナイスキャスティング!…もしかしたら、オスカー助演男優賞いけるんじゃないの?

(以下、ネタバレ要素ありのためご注意下さい)

本作で「こりゃシビれた、クールだわ」と思った点は下記の通り。

トムトムがチンピラを撃ったとき。あのトドメ撃ちの冷酷さと云ったら!…「ラスト サムライ」では殺陣をみっちりやってバッチリ決めてた人だから、今回は銃を相当訓練したんだろうな。もちろんセンスだってあるでしょう。でもトムトムは努力の人だと思うナリ。

ふたりがタクシーでL.A.の街を走っているとき、突然狼が目の前に現れた。獲物を狙っている狼が前を通り過ぎるまで、車を止めて見守るマックス。その姿を後ろの座席から眺めるヴィンセント。L.A.に突然現れた狼はヴィンセントそのままだ。狼が狙いを定めている小動物はマックスだろう。自分の境遇を目の当たりにしながらそれでもマックスは穏やかで――ヴィンセントはそんな彼を見てどう思っただろう?…なんとも云えない不思議な一瞬。立場が違う、お互い共感しあうこともないだろうふたりが、ほんのひとときだけ思いを同じにしたかのよう。L.A.のような大都会で狼が実際に車道に出てくるかは疑わしいけど、嫌味でない、なんとも枯れた比喩は素晴らしいっス。あ〜、言葉にするのがもったいない!

マックスがヴィンセントの生い立ちを想像して話し出したときのヴィンセントの顔。きっと当たってたんだろうな…。

L.A.という乾いた都会、流れる音楽、天文学的に云えばちっぽけなんだろうふたりの男が出会い、一緒いた数時間内でのケミストリー……マイケル・マンも昔の作品に比べりゃその男臭い(ムサイとも云う)演出がずいぶんと洗練されたもんだと、つい唸ってしまった作品。…う〜ん、マンダム!

セリフやトムトムに多少の暑苦しさがあっても、私はさほど気にならず――それより、自分が男だったらもっと映画にシビれてたかもと、己のジェンダーを感じてしまいましたよ。やれやれ…。

あと「タクシー・ドライバー」(1976)なシーンがありましたので、映画ファンから「オマージュだ!」と云われそうですね。

でも…なんでジェイソン・ステイサムがあんなチョイ役でいたんだろう…。

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