「オリバー・ツイスト」
2006年5月19日
←あのロマン・ポランスキー監督が、文豪チャールズ・ディケンズの「オリバー・ツイスト」を映画化!…なんでまたいきなりそんなベタな題材を選んだのか――それは監督にお聞きしないとわかりませんが、映画化の一報を聞いたときは、文学ならばディケンズよりヴィクトル・ユーゴーの「レ・ミゼラブル(ああ無情)」のほうが監督向きなんじゃないかと、そんな印象を持っていました。ただ、英国文学をネタにしたことは別に驚きませんでしたよ、だって監督の意外性はよく知ってましたもの。過去に「ディズニーのアトラクション『カリブの海賊』が大好きなんだ。ワクワクする」とコメント、ベッタベタな海賊映画を手がけたことだってあるし、生前のブルース・リーとはたいへん仲が良く、なんと一緒にスキー旅行に行ったこともあるとおっしゃってたし。……ね?作風やインタビュー記事からは想像デッドゾーン、意外でしょ?
■「オリバー・ツイスト」Oliver Twist(2005・英/チェコ/伊/仏)
IMDb→http://us.imdb.com/title/tt0380599/
日本公式サイト→http://www.olivertwist.jp/
監督:ロマン・ポランスキー
脚本:ロナルド・ハーウッド
出演:バーニー・クラーク、ベン・キングズレー、ハリー・イーデン、ジェイミー・フォアマン、他
上映時間:129分
ストーリー:(amazonより引用)
♪わ〜たしのむねの〜かたすみ〜にさ〜いてる〜ちいさなはなに〜なまえはな〜いけど〜かなしいときは〜あかいはなびらい〜ちま〜い〜めがしらに〜あてるの〜するとなみだがきえていく〜わ〜た〜しだっ(以下略)♪
まさに「ロマン・ポランスキー提供:世界名作劇場(129分)」。
これがもし、ハリウッドで手堅い監督によりフツーに製作された「オリバー・ツイスト」ならば、可愛らしい子役の名演によって、観客を「なんてけなげなオリバー!」「かわいそうに…」「ああ、本当によかったわ!」と素直に思わせただろうし、日本製作によるアニメだったら感動巨編となったでしょうが――監督はあのロマン・ポランスキー。どんなにに正攻法な演出をしたって、そう簡単にはいかない。
感情移入するより、オリバーが運命に翻弄される姿、そんな彼を巡る人々を追うので精一杯になってしまった。それは、本来ならば1年50回にわけて描かれるのがベストであろう題材を、約120分にギュッとまとめてあるため、展開がとにかくはやいというのもあるけれど、さすがポランスキーとゆーか…オリバーが受ける、スリ団のボス・悪人たちからの陰湿ないじめや仕打ち、苦難、数奇で理不尽な運命は、とにかく強大で避けがたいものであり、かわいそうというより、小さな彼にはどうやっても抗えないんだよと観る側に思わせる――云いかえれば、同情者というより傍観者の視点で観客はオリバーを見てしまうからで――ってことはつまり、な〜んだ、ディケンズが題材だろうとなんだろうと、結局はポランスキーの得意路線になっているってことか。ただ違うのは、最後に救いがあることくらい…それでもスッキリと感動させないあたりは、やっぱりポランスキーたる所以なんだけれども。
受難しまくりなオリバー演じるバーニーくんは、常に能面演技で可愛らしいとは一概に云えない。逆にその他の俳優たちはみな舞台演技(映画向きとして好まれる、自然な演技ではないということ)をしているため、よりいっそう、オリバーは本人の意思空しく運命に翻弄されてる少年に見えてしまう。助かるか?と思わせといて、さらに落とされるオリバー……そこらへん、往年の作品よりは控え目とはいえ、充分陰湿かつ袋小路で不条理なポランスキー節がブイブイだ。
好みは別にして、見始めると最後まで一気に観てしまうし、私は約120分間ちっとも退屈しなかった。これ以上長くなるのはしんどいだろうから、ちょうどよい上映時間であり、長くするくらいならTVシリーズにしたほうがいい。
でもいまどき「オリバー・ツイスト」を観に行く親子連れはあまりいなかった、また大人が揃って観に行くような題材でもなかったということで、微妙なポジションに立ってしまい、客層がつかめないまま興行的に失敗した本作…う〜ん、ちょっと残念かな…。
私は「オリバー・ツイスト」を読んだことがなく、そのため巷で「あのときおかわりさえ云わなかったら、オリバー・ツイストは〜」と、なぜディケンズが引用されるのか、いったいなにを例えてるのかわからなかった。でも今回、本作で納得――うんうん、人生どこでどう転ぶかわかんないもん…ってことさね。
■「オリバー・ツイスト」Oliver Twist(2005・英/チェコ/伊/仏)
IMDb→http://us.imdb.com/title/tt0380599/
日本公式サイト→http://www.olivertwist.jp/
監督:ロマン・ポランスキー
脚本:ロナルド・ハーウッド
出演:バーニー・クラーク、ベン・キングズレー、ハリー・イーデン、ジェイミー・フォアマン、他
上映時間:129分
ストーリー:(amazonより引用)
時は一九世紀。イギリスの片田舎で生を授かったオリバー・ツイスト(B・クラーク)は、両親の顔も知らず貧民院に預けられ、貧困と厳しさに耐えて育っていった。やがて葬儀屋に引き取られるが、冷酷な人々の仕打ちは容赦ない。苦しみぬいた末、ついに彼は自らの足で、希望の町ロンドンへと向かう。そこでオリバーに救いの手を差し延べたのは、恐ろしい盗賊の一味だった―。
♪わ〜たしのむねの〜かたすみ〜にさ〜いてる〜ちいさなはなに〜なまえはな〜いけど〜かなしいときは〜あかいはなびらい〜ちま〜い〜めがしらに〜あてるの〜するとなみだがきえていく〜わ〜た〜しだっ(以下略)♪
まさに「ロマン・ポランスキー提供:世界名作劇場(129分)」。
これがもし、ハリウッドで手堅い監督によりフツーに製作された「オリバー・ツイスト」ならば、可愛らしい子役の名演によって、観客を「なんてけなげなオリバー!」「かわいそうに…」「ああ、本当によかったわ!」と素直に思わせただろうし、日本製作によるアニメだったら感動巨編となったでしょうが――監督はあのロマン・ポランスキー。どんなにに正攻法な演出をしたって、そう簡単にはいかない。
感情移入するより、オリバーが運命に翻弄される姿、そんな彼を巡る人々を追うので精一杯になってしまった。それは、本来ならば1年50回にわけて描かれるのがベストであろう題材を、約120分にギュッとまとめてあるため、展開がとにかくはやいというのもあるけれど、さすがポランスキーとゆーか…オリバーが受ける、スリ団のボス・悪人たちからの陰湿ないじめや仕打ち、苦難、数奇で理不尽な運命は、とにかく強大で避けがたいものであり、かわいそうというより、小さな彼にはどうやっても抗えないんだよと観る側に思わせる――云いかえれば、同情者というより傍観者の視点で観客はオリバーを見てしまうからで――ってことはつまり、な〜んだ、ディケンズが題材だろうとなんだろうと、結局はポランスキーの得意路線になっているってことか。ただ違うのは、最後に救いがあることくらい…それでもスッキリと感動させないあたりは、やっぱりポランスキーたる所以なんだけれども。
受難しまくりなオリバー演じるバーニーくんは、常に能面演技で可愛らしいとは一概に云えない。逆にその他の俳優たちはみな舞台演技(映画向きとして好まれる、自然な演技ではないということ)をしているため、よりいっそう、オリバーは本人の意思空しく運命に翻弄されてる少年に見えてしまう。助かるか?と思わせといて、さらに落とされるオリバー……そこらへん、往年の作品よりは控え目とはいえ、充分陰湿かつ袋小路で不条理なポランスキー節がブイブイだ。
好みは別にして、見始めると最後まで一気に観てしまうし、私は約120分間ちっとも退屈しなかった。これ以上長くなるのはしんどいだろうから、ちょうどよい上映時間であり、長くするくらいならTVシリーズにしたほうがいい。
でもいまどき「オリバー・ツイスト」を観に行く親子連れはあまりいなかった、また大人が揃って観に行くような題材でもなかったということで、微妙なポジションに立ってしまい、客層がつかめないまま興行的に失敗した本作…う〜ん、ちょっと残念かな…。
私は「オリバー・ツイスト」を読んだことがなく、そのため巷で「あのときおかわりさえ云わなかったら、オリバー・ツイストは〜」と、なぜディケンズが引用されるのか、いったいなにを例えてるのかわからなかった。でも今回、本作で納得――うんうん、人生どこでどう転ぶかわかんないもん…ってことさね。
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