■『エロとじv―b-BOYアンソロジー』
ISBN:4862631908 単行本 リブレ出版 2007/06 ¥1,100
2007年6月19日『エロほんv』と同時発売!!キラキラ表紙が目印!業界騒然!! ボーイズノベルの最強作家陣ここに集まる!小説b-Boyで初登場以降、ありえないほどの人気エッチ企画が、新作書き下ろし6本を加えてアンソロジー化★ 空前絶後のエッチを見よ!
ラインナップ
英田サキ、あさぎり夕、あすま理彩、斑鳩サハラ、和泉 桂、榎田尤利、鬼塚ツヤコ、木原音瀬、南原 兼、水戸 泉、水上ルイ、山藍紫姫子、雪代鞠絵

前口上も終わったことだし、さて感想を書くか!と思ったら、このアンソロジー、13本も掲載されている!しまった…。全部書き上げるまでマジ1週間かかるよ、こりゃ!

【お知らせ】
感想をつらつらと13本並べるのはツライので、1本文につき3本にします。
ただし「これは面白いので感想をスペシャルに書きたい」作品の場合、1本だけのUPにします。
「BLにおける小説と挿絵と惹句は、一蓮托生な関係である」と思っているので、それらについても感想を述べます。

!マジで完全ネタバレ注意報!

■「痴漢電車」 作:鬼塚ツヤコ 扉絵:佐々成美
扉惹句:「満員電車の中、私の体に絡みつく忌まわしい手の正体は……」

オープニング1本目は痴漢電車モノである。年下攻。おおまかなストーリーは「満員電車の中で、若き美貌の国税局官僚が見知らぬ男から陵辱される。ところがその男の正体はなんと…」というもので、キャラが鬼塚ツヤコ得意の「嗜虐的な攻、そんな攻を拒めない自虐的な受」、よって彼女のファンはいつも通りに読めるだろう。

だが私にはつまらなかった。いやだってさ、「子供の頃(攻は小学生、受は中学生)に家庭の事情で別れても、ずーっと受が好きでした」という攻の設定からしてすでに無理があるのに(少女マンガっぽいが)、10数年後に再会し、いきなり受をここぞとばかりに電車で陵辱するか?…受も受だ。「ずっと気になってた」って、そんな10数年も経って再会したばっかりなのに?…もとから嗜虐的な攻というのは共感を得にくい。BLは男性向けより共感を必要とする。ラブにストーリーを求めるからだ。読み手に少しでもその共感を与えようと、ふたりの過去や背景を描いてはいるのだが、全部描こうとしている。そんなの短編では無理だろう。攻の一人称ならまだいいが、受視点の三人称だから余計に苦しい。せっかく短編なんだから、もっとスリリングにキメてくれ!

痴漢電車なんだから(?)無理な背景や過去は余計だ。いっそ受をもとからホモな設定の一人称にして、「好きな同僚(上司でも部下でもいい)と仕事先に向かう満員電車で、痴漢に遭いました。恥ずかしくてたまらないのに、嗚呼!カラダは云うことをきかない。そんな姿を好きな相手に見られるなんて!」ときて、ラストで「実はそいつが!」と、シンプルに持ってきたほうがいいと思うんだけどなあ。

評価:★★(つまらない)
秋林好み度:★★(ニガテ…というより興味ナシ)
同じ「密空間で陵辱、年下攻、ワケありの攻と受」という設定で、このあと素晴らしい出来のスリリングな短編が出てくるだけに、どうしても辛口になってしまう。絵師の佐々成美は上手い。でも、扉絵で完全ネタバレしているのはどうだろう?…誰が触っているかわからない、というところから始まっているので、攻の顔がわからないほうがよかったような…。辱めによって顔の赤い受、そんな受に容赦なく伸ばされる無数の手、誰だかわからない後姿の攻…とかね。惹句は可もなく不可もなく。

次!

■「バッドステータスv発情中」 作:南原兼 扉絵:ホームラン・拳
扉惹句:「かわいいお尻にしっぽをつけてあげる。」

私にとって初南原作品。なんとなく住む世界が違うような気がして、いままで読んだことがなかった。でもたしか、あの伝説のオビ惹句「そう…。そのまま飲みこんで。僕のエクスカリバー…」がついたのは、この人の本だよね?…という話はさておき。

パブリックスクールもの。絵師がホームラン・拳なので、パブリックスクールものでありがちな大人っぽい耽美系ではないはず、だいたい扉惹句からしてヤバイ、もしかしてこれは…と警戒していたが、1行目「お兄様の猫耳」が目に入った瞬間――まったく猫耳属性のない秋林に痛恨の一撃!HP300ダメージ、ステータスはバッドどころがAWFUL!ゲームオーバー!

抵抗もできず、撃沈となった1本。合掌。

評価:★(お好きな人はどうぞ)
秋林好み度:NO STAR(沈没中)
ちゃんと読了はした。猫耳つけててもやることはやるなあ、カワイイのにみんな下半身はたいそうなごリッパ屋だ、という印象。ティミーとかフランシスとか、いろいろソレっぽい名前が出てくるが、My提案として「ジュリアン」というのはどうだろう?……。評価は★としたが、これはヘタというのではなく、純粋に「お好きな人はどうぞ」というもの。南原兼は作風にあった文章を書いている。属性のある人にとっては、逆に上手い作家と云えるんじゃないだろうか。私にとっては「エクスカリバーの人」だが。

次!

■「媚薬」 作:水上ルイ 扉絵:池玲文
扉惹句:「陛下を犯し、欲望を注ぎ込みたい。何度そう思ったことか…!!」

西洋が舞台。馬丁(馬の世話係)×陛下(王様)な下克上モノ。池玲文による扉絵が素晴らしい。西洋コスプレはツボ(だってアタシ西洋史学専攻だったし)。しかも攻の馬丁がまるでアンドレだ!ブラボー!

西洋のコスプレ下克上モノにおける攻の定番は、昔から馬丁か庭師である。「チャタレイ夫人の恋人」のメラーズだって、庭師だ(あ、森番か)。フツーの使用人より馬丁や庭師のほうが、断然ハンキー(逞しくセクシーな男、という意)だからで、攻を陛下の馬丁とした水上ルイはよくわかっているね、うんうん。これでキャラの年齢設定がもうちょっと上の年下攻(本作の設定は攻馬丁が28歳、受陛下が17歳。個人的には攻が20代後半、王様30代前半がストライクだ)だったら、もっとツボだったのだが。あんまりコドモな受はちょっと…。でも13本もある以上、ピッタシカンカンは難しいだろう。ゼイタクは云ってられない。

受の一人称による展開は、人となりと状況が把握しやすいので、短編では効果的だ。臣下による腐敗政治の結果、国は崩壊、明日には敵国に奴隷として差し出される運命の王。その最後の夜、媚薬を盛って相手に思いを遂げたい――というストーリーはありがちではあるが、誰がどのように媚薬を使ったかにヒネリがあって、ナルホドそうきたかとちょっと感心した。

がしかし。ベストかと思われた受一人称がなあ…。ラブシーンというかエロシーンになった途端、一気に「陛下によるエロ実況中継」になってしまうのがツライ。しかもダラダラダラダラ。ヘタすりゃバカップルに見える。攻もベラベラと喋り過ぎ、もっと無口のほうがハーレクインっぽいと思うんだが…どうだろう?

評価:★★★(面白いほうに入る…かな)
秋林好み度:★★★(まあまあ、かな。設定は好きなんだけどね)
17歳の男の子が自分のソレを「蕾」と表現するだろうか?というギモンは残る。ところで、私は今回初めて水上ルイの作品を読んだのだが、エロシーンでクセがあるね、この人。

「……アアッ!……アアッ!……すごい……」
「……くうっ……っ」

エロシーンになると、「三点リーダ×2 あえぎ声 三点リーダ×2」。
(三点リーダ→「…」のこと)
つまり、カギカッコのセリフが「三点リーダ2つで始まって、セリフを挟み、三点リーダ2つで終わる」という法則。ご本人は気付いていないだろう。必ず改行されることもあって、これ、連発されるとものすごーく紙面から浮いて見える。ぱっとページ開くだけで、どこからエロが始まって終わるか、わかってしまう。「ああ、ヤってるヤってる」という感じ。…いいんだか、悪いんだか。

次!

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