2006年下半期映画ちょっとだけ感想&デキゴトロジー 2
2007年8月22日 年度別フェイバリット10映画
2006年度下半期映画ちょっとだけ感想&デキゴトロジー」です。これは私が昨年下半期に鑑賞した映画の中で、ちょっとだけ感想を書いておきたい、感想は別に書いたけどそれに補足をしておきたい、映画館でトンデモ事件に遭遇したので報告しておきたい…など、基本的に簡単な感想と、ヨタ話を記したものです。ただし、観た映画すべてを書くことは絶対ムリ!不可能!なので、一部だけとなっております。
なんで今ごろ昨年の下半期を振り返ってるんだ?…って云われそうですが、その…いろいろありまして…ブログに書くのが遅れに遅れちゃったんです。タイムリーでなくてすみましぇん。
■「狩人と犬、最後の旅」
ロッキー山脈で自給自足の生活を送る実在の老トラッパー(罠猟師)ノーマン・ウィンター主演の、半ドキュメンタリーかつアドベンチャー映画。最初に出てきたノーマンの愛犬ナヌーク(そーいえば「ロストボーイ」でコリー・ハイムが飼ってた犬も同じハスキーで、名前も同じナヌークだったなあ)が大変に賢く、山では颯爽とした活躍を見せるのに、下界に下りた途端、無能になってしまうというのがせつなかった。飼い主のノーマンもそういうタイプなんだろうな…。動物愛護団体やベジタリアンはいろいろ云うだろうけど、「自然は人間の手で調節しなければ(=だから山に猟師は必要であり、自分たちは狩りをするのである)」というトラッパーたちの言葉に、人間としての驕りは感じられない。自然とともに生きてきた人の真摯な言葉は、それもまた真実であると私は思う。
■「マッチポイント」
「は?ウディ・アレン監督作なのに、舞台が(NYではなく)英国ロンドンだあ?」と少々驚いて観に行ったら、「BBC Films」のロゴがでーん!とスクリーンに現れ、納得。ナルホド、スポンサー事情ね、そっかそっか>ウディ
ワーキングクラス出身の元テニスプレイヤーの男が、アッパークラスに憧れて資産家に取り入り、成り上がろうとするが、そう簡単にはいかなくて…という、ストーリーおよび結末もなんとなくパトリシア・ハイスミスの小説『リプリー』(映画「太陽がいっぱい」じゃなく、原作のほう。ラストが決定的に違う)を思い出すような内容だった。ただその…「運」を巡って、ブラックな展開を見せるコメディかつサスペンスなのはいいんだけど、私が期待した「英国風のちょっと壊れた皮肉なユーモア」を感じさせる登場人物やセリフというものが全然なかった。アッパークラスのおしゃべりも上っ面でなんだかなあ…。監督・脚本が米国人であるウディなので仕方ないとはいえ、演じてるのが英国系俳優ばっかりだったから、なおさら「外国人が英国を舞台に映画を撮ってみました」雰囲気炸裂、さらにオペラまで鳴り響いちゃって、うわ〜、これ観た英国人はみなさん「………。」だったんじゃ?…まあ、英国市場だけを狙って製作されたわけじゃないだろうし、そもそも極東女子がそんな見方をすること自体がおかしいか。ごめんちゃい!>ウディ
スカジョは特に上手い女優とは思わないけど、前半の魔性の女より後半のウザイ女っぷりが実に見事。「黙れよ、お前!」と観客に思わせたあたり、ナイスキャスティング。あんなハスキーボイスとフシギな色気を持っている若い女優さんって、ほかにいないよね。でも年齢を重ねたらどうなるんだろう…。
■「キンキーブーツ」
この映画の主人公チャーリーのほうが、よっぽど英国男って感じがする。でもその…予想以上に「フツーにハートフルなちょっといい映画」だったので、思いっきり毒牙を抜かれた。実話をベースにしているから遠慮もあるのかな?…ま、私も定期的にこうやって毒牙を抜かれたほうがいいんだろうな、どうせまた生えてくるんだろうから。……。英国が舞台で実話ベースにしたハートフルコメディに、数年前公開された「カレンダー・ガールズ」(好きだ♪)ってのもあったけど…って、あ!あの映画と脚本家が同じなんだ!…ふ〜ん、そっか…。
■「ユナイテッド93」
9.11、実際に現場で働いていた空港の管制官やクルー、一部の軍関係者が自らの役でそのまま出演、ただ、事件のあったユナイテッド93便の乗員・乗客役に当事者がひとりもいないだけ、93便の中で繰り広げられただろうドラマを、製作側が念入りに行ったという取材に基づきながら、最初から最後まで傍観者視点、淡々淡々淡々淡々の積み重ねで貫き描いて強烈な印象を残す、ある意味とってもエンタテイメントな墜落映画。墜落映画ってなんじゃそりゃ?と云われそうだけど、だって、93便が飛び立ってから落ちるまでの話だし、観終わった観客も気分的に墜落しちゃってそうな映画だから。やっぱジェットコースター映画って云ったほうがいい?監督が「ブラディ・サンデー」のポール・グリーングラス(英国人)で、そういえば、あの映画も俳優陣にスターがいなくて、実話をベースに悲劇の一部始終を、傍観者淡々視点の手ブレ映像で描いていたよなあと思い出し、製作発表を聞いたときから期待していた1本だった。グリーングラスだったら、乗客を英雄扱いした米国視点の「テロって最低!」というだけの映画なんざ作らない…ってか、作るわけないよねえ?…ちなみにこれ、製作はあのワーキング・タイトル・フィルムズ(WT社)。
傍観者淡々視点(フェア)なため、テロリストは非情かつ悪意に満ちた描かれ方はされていなくて、「実行犯として任命されてしまった人物」扱い。ヘタすれば「実行犯に選ばれてかわいそうに」と同情してしまうほど。乗客たちも英雄としてじゃなく、泣く人、電話する人、ヤケクソパワーで抵抗した人…として描かれていた。そしてオタオタするだけの管制塔と軍関係者(しかも演じるのは同じ人物…よく出演したよなあ)。マニュアルなんて役に立たなかった、無力だった、ざまざまな人がいたのに誰もテロは止められなかった。観客のほとんどはあの事件のときも傍観者だったはずで、またしてもこの映画の前で傍観者となってしまう。「テロって最低」と思う前に、「なんでなんだろう、なんでテロは起きるんだろう?」と、「なんでこんな目に遭うの?」と思っていただろう乗客と一緒に落ちながら、重く考えさせられた1本。どよーん。
「3」に続きます。
なんで今ごろ昨年の下半期を振り返ってるんだ?…って云われそうですが、その…いろいろありまして…ブログに書くのが遅れに遅れちゃったんです。タイムリーでなくてすみましぇん。
■「狩人と犬、最後の旅」
ロッキー山脈で自給自足の生活を送る実在の老トラッパー(罠猟師)ノーマン・ウィンター主演の、半ドキュメンタリーかつアドベンチャー映画。最初に出てきたノーマンの愛犬ナヌーク(そーいえば「ロストボーイ」でコリー・ハイムが飼ってた犬も同じハスキーで、名前も同じナヌークだったなあ)が大変に賢く、山では颯爽とした活躍を見せるのに、下界に下りた途端、無能になってしまうというのがせつなかった。飼い主のノーマンもそういうタイプなんだろうな…。動物愛護団体やベジタリアンはいろいろ云うだろうけど、「自然は人間の手で調節しなければ(=だから山に猟師は必要であり、自分たちは狩りをするのである)」というトラッパーたちの言葉に、人間としての驕りは感じられない。自然とともに生きてきた人の真摯な言葉は、それもまた真実であると私は思う。
■「マッチポイント」
「は?ウディ・アレン監督作なのに、舞台が(NYではなく)英国ロンドンだあ?」と少々驚いて観に行ったら、「BBC Films」のロゴがでーん!とスクリーンに現れ、納得。ナルホド、スポンサー事情ね、そっかそっか>ウディ
ワーキングクラス出身の元テニスプレイヤーの男が、アッパークラスに憧れて資産家に取り入り、成り上がろうとするが、そう簡単にはいかなくて…という、ストーリーおよび結末もなんとなくパトリシア・ハイスミスの小説『リプリー』(映画「太陽がいっぱい」じゃなく、原作のほう。ラストが決定的に違う)を思い出すような内容だった。ただその…「運」を巡って、ブラックな展開を見せるコメディかつサスペンスなのはいいんだけど、私が期待した「英国風のちょっと壊れた皮肉なユーモア」を感じさせる登場人物やセリフというものが全然なかった。アッパークラスのおしゃべりも上っ面でなんだかなあ…。監督・脚本が米国人であるウディなので仕方ないとはいえ、演じてるのが英国系俳優ばっかりだったから、なおさら「外国人が英国を舞台に映画を撮ってみました」雰囲気炸裂、さらにオペラまで鳴り響いちゃって、うわ〜、これ観た英国人はみなさん「………。」だったんじゃ?…まあ、英国市場だけを狙って製作されたわけじゃないだろうし、そもそも極東女子がそんな見方をすること自体がおかしいか。ごめんちゃい!>ウディ
スカジョは特に上手い女優とは思わないけど、前半の魔性の女より後半のウザイ女っぷりが実に見事。「黙れよ、お前!」と観客に思わせたあたり、ナイスキャスティング。あんなハスキーボイスとフシギな色気を持っている若い女優さんって、ほかにいないよね。でも年齢を重ねたらどうなるんだろう…。
■「キンキーブーツ」
この映画の主人公チャーリーのほうが、よっぽど英国男って感じがする。でもその…予想以上に「フツーにハートフルなちょっといい映画」だったので、思いっきり毒牙を抜かれた。実話をベースにしているから遠慮もあるのかな?…ま、私も定期的にこうやって毒牙を抜かれたほうがいいんだろうな、どうせまた生えてくるんだろうから。……。英国が舞台で実話ベースにしたハートフルコメディに、数年前公開された「カレンダー・ガールズ」(好きだ♪)ってのもあったけど…って、あ!あの映画と脚本家が同じなんだ!…ふ〜ん、そっか…。
■「ユナイテッド93」
9.11、実際に現場で働いていた空港の管制官やクルー、一部の軍関係者が自らの役でそのまま出演、ただ、事件のあったユナイテッド93便の乗員・乗客役に当事者がひとりもいないだけ、93便の中で繰り広げられただろうドラマを、製作側が念入りに行ったという取材に基づきながら、最初から最後まで傍観者視点、淡々淡々淡々淡々の積み重ねで貫き描いて強烈な印象を残す、ある意味とってもエンタテイメントな墜落映画。墜落映画ってなんじゃそりゃ?と云われそうだけど、だって、93便が飛び立ってから落ちるまでの話だし、観終わった観客も気分的に墜落しちゃってそうな映画だから。やっぱジェットコースター映画って云ったほうがいい?監督が「ブラディ・サンデー」のポール・グリーングラス(英国人)で、そういえば、あの映画も俳優陣にスターがいなくて、実話をベースに悲劇の一部始終を、傍観者淡々視点の手ブレ映像で描いていたよなあと思い出し、製作発表を聞いたときから期待していた1本だった。グリーングラスだったら、乗客を英雄扱いした米国視点の「テロって最低!」というだけの映画なんざ作らない…ってか、作るわけないよねえ?…ちなみにこれ、製作はあのワーキング・タイトル・フィルムズ(WT社)。
傍観者淡々視点(フェア)なため、テロリストは非情かつ悪意に満ちた描かれ方はされていなくて、「実行犯として任命されてしまった人物」扱い。ヘタすれば「実行犯に選ばれてかわいそうに」と同情してしまうほど。乗客たちも英雄としてじゃなく、泣く人、電話する人、ヤケクソパワーで抵抗した人…として描かれていた。そしてオタオタするだけの管制塔と軍関係者(しかも演じるのは同じ人物…よく出演したよなあ)。マニュアルなんて役に立たなかった、無力だった、ざまざまな人がいたのに誰もテロは止められなかった。観客のほとんどはあの事件のときも傍観者だったはずで、またしてもこの映画の前で傍観者となってしまう。「テロって最低」と思う前に、「なんでなんだろう、なんでテロは起きるんだろう?」と、「なんでこんな目に遭うの?」と思っていただろう乗客と一緒に落ちながら、重く考えさせられた1本。どよーん。
「3」に続きます。
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