谷崎泉スペシャル!【14】:『エスケープ』 光風社出版 2003年
2007年10月19日 Rotten Sisters!■「エスケープ」
ISBN:4415088511 文庫 谷崎泉(挿絵:如月七生) 光風社出版 2003/04 ¥500
光風社クリスタル文庫といえば、『魚住くん』シリーズ(榎田尤利)・『DESPERADO』シリーズ(柏枝真郷)・『間の楔』(吉原理恵子)といった、今はなきJUNEの名作かつ代表するシリーズに、『ドクター×ボクサー』シリーズ(剛しいら…しまった!これもJUNE掲載作品だった…)など、アクの強い作品ラインナップを抱えた、濃い目の個性がキラリと渋く光る(光ってるの!)レーベルである。でも本文フォントは妙に丸っこくてポップ。レーベルイメージに合ってないと思う。
なので、そんなレーベルに谷崎泉作品があるとは思わなかったよーっ!でも絶版で手に入らないよーっ!どうしよー!?…と困っていたら、N駅前にある某古本屋チェーン店の棚に陳列されているのを発見。即日捕獲。以下感想。
!以下、ネタバレ注意報!
――苦しい、重い、つらい。
ストーリーの内容やプロット(構想・筋立て)ではなく、展開が。サクサクと読ませるあの谷崎泉が、もがいて苦しんでいる。レーベルのイメージ(たぶんこの場合「DESPERADO」)と、絵師・如月七生さんの挿絵に、引きずられているかのよう。書き手の迷いが伝わってくるため、読み手も同調してつらくなる。
作品のカテゴリとしてはミステリー系BL(刑事モノ)になると思うのだが、ミステリーとBL、正直どっちつかずの印象。主要キャラによる捜査に面白みがないし、唐突に犯人像が浮かび上がり、よくわからないうちに事件が解決しているため、ミステリーとしてはどうにも消化不良。BLとしてみても、ラブよりも部署11係(通称バラ)の人間関係に描写が割かれた上に、ラブシーンは数行、ストイックを通り越したキャラは虚無僧のようで味気ない。榎本と国枝が「焼けぼっくいに火」となっかなかならない理由――どんな過去がふたりに影響を与えているのか――この作品でも後半にならないとわからないため、カメより遅いラブ進展に、焦らされるどころかまたもやイラつく。そして過去が語られても、国枝がなぜそこまでこだわっているのか、イマイチわからなかった。
それでも「つまらない」と切り捨てられないのは、これもまた雰囲気が悪くない作品だからで、たとえば榎本が国枝に対しもう少しドラマティックに動いてくれたり(20代で若いんだから)、過去や秘密を持ち越し過ぎないで、早めにふたりの事情がわかって、さらに国枝が素直になっていたら、BLとして共感を得たかもしれない。
ミステリー調な作品は初めてだったのか、素材はいいんだけども、まな板の上でどう切ったらいいのかわからない――素材だけで勝負し、失敗したという印象の1本。雰囲気は悪くないだけに…ああ!もう!本当に惜しいったら!
評価:★★☆(惜しい作品を「つまらない」と切り捨てられない)
センセにも失敗したという自覚はあると思う。この失敗が経験のひとつになり、また勉強となって次に繋がるはずで――リベンジだ、リベンジ!
カバーデザインについて少し。クリスタル文庫さん、あのね――如月七生さんによる濃厚なブラウン調の絵に、カジュアルな丸ゴシック風フォントでネイビーのタイトル文字って、なんじゃそりゃ!?…雰囲気ブチ壊しだってば!バカもんっ!…ここはやはりイタリックがかった明朝体を選択するのがベストじゃないのかっ!?
ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
ISBN:4415088511 文庫 谷崎泉(挿絵:如月七生) 光風社出版 2003/04 ¥500
12年前兄が殺された事件に蟠りを残したまま関係し、一度は別れた榎本と兄の友人国枝。今また刑事として、いわくつき部署11係(通称バラ)で再会した二人の前で、過去を彷彿させる連続バラバラ事件が発生!再会しても自分を拒まない彼の本心を測りかね榎本の迷いは深まり…。すれ違う二人の想いは…。
光風社クリスタル文庫といえば、『魚住くん』シリーズ(榎田尤利)・『DESPERADO』シリーズ(柏枝真郷)・『間の楔』(吉原理恵子)といった、今はなきJUNEの名作かつ代表するシリーズに、『ドクター×ボクサー』シリーズ(剛しいら…しまった!これもJUNE掲載作品だった…)など、アクの強い作品ラインナップを抱えた、濃い目の個性がキラリと渋く光る(光ってるの!)レーベルである。でも本文フォントは妙に丸っこくてポップ。レーベルイメージに合ってないと思う。
なので、そんなレーベルに谷崎泉作品があるとは思わなかったよーっ!でも絶版で手に入らないよーっ!どうしよー!?…と困っていたら、N駅前にある某古本屋チェーン店の棚に陳列されているのを発見。即日捕獲。以下感想。
!以下、ネタバレ注意報!
――苦しい、重い、つらい。
ストーリーの内容やプロット(構想・筋立て)ではなく、展開が。サクサクと読ませるあの谷崎泉が、もがいて苦しんでいる。レーベルのイメージ(たぶんこの場合「DESPERADO」)と、絵師・如月七生さんの挿絵に、引きずられているかのよう。書き手の迷いが伝わってくるため、読み手も同調してつらくなる。
作品のカテゴリとしてはミステリー系BL(刑事モノ)になると思うのだが、ミステリーとBL、正直どっちつかずの印象。主要キャラによる捜査に面白みがないし、唐突に犯人像が浮かび上がり、よくわからないうちに事件が解決しているため、ミステリーとしてはどうにも消化不良。BLとしてみても、ラブよりも部署11係(通称バラ)の人間関係に描写が割かれた上に、ラブシーンは数行、ストイックを通り越したキャラは虚無僧のようで味気ない。榎本と国枝が「焼けぼっくいに火」となっかなかならない理由――どんな過去がふたりに影響を与えているのか――この作品でも後半にならないとわからないため、カメより遅いラブ進展に、焦らされるどころかまたもやイラつく。そして過去が語られても、国枝がなぜそこまでこだわっているのか、イマイチわからなかった。
それでも「つまらない」と切り捨てられないのは、これもまた雰囲気が悪くない作品だからで、たとえば榎本が国枝に対しもう少しドラマティックに動いてくれたり(20代で若いんだから)、過去や秘密を持ち越し過ぎないで、早めにふたりの事情がわかって、さらに国枝が素直になっていたら、BLとして共感を得たかもしれない。
ミステリー調な作品は初めてだったのか、素材はいいんだけども、まな板の上でどう切ったらいいのかわからない――素材だけで勝負し、失敗したという印象の1本。雰囲気は悪くないだけに…ああ!もう!本当に惜しいったら!
評価:★★☆(惜しい作品を「つまらない」と切り捨てられない)
センセにも失敗したという自覚はあると思う。この失敗が経験のひとつになり、また勉強となって次に繋がるはずで――リベンジだ、リベンジ!
カバーデザインについて少し。クリスタル文庫さん、あのね――如月七生さんによる濃厚なブラウン調の絵に、カジュアルな丸ゴシック風フォントでネイビーのタイトル文字って、なんじゃそりゃ!?…雰囲気ブチ壊しだってば!バカもんっ!…ここはやはりイタリックがかった明朝体を選択するのがベストじゃないのかっ!?
ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
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